それでもハラは減る

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読む前には戻れない、健気な問題作。石田衣良『うつくしい子ども』

読むこと#8

石田衣良『うつくしい子ども』

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のどかなニュータウンで起こった、女児の惨殺事件。

犯人は中学1年生。

 

 

ほとんどの人は、生活のなかで事件の報道を目にするとき、
被害者の側に同情し、胸を痛めていると思います。

「かわいそうに…」

「なんでこんなことをされて…」

 

 

でも、加害者にも当たり前に家族がいる。
本作は、事件のその後を ”加害者の兄” の視点から追う物語。

 

 

普段気づきにくい、気づいても言い出しにくい

「加害者家族だって、被害者なのかもしれない」

という面を見せられはっとしました。

 

 

 

主人公は、植物観察が好きな中学2年生・幹生(みきお)。

一つ下の弟・和枝(かずし)と
小3の妹・瑞葉は華やかな見た目だけど、
幹生はニキビ肌でうつむきがち、あだ名は(ジャガイモの)「ジャガ」。

 

 

近所の裏山で起こったセンセーショナルな事件。

その被疑者として弟が補導され、幹生の生活は一変します。

 

 

過酷な日々のなかで幹生は、
和枝がどうしてあんな事件を起こしたのか調べ始めます。

 

「最低の人間だって、誰かがそばに寄り添ってあげてもいいはずだ。

それがぼくの弟ならなおさらじゃないか」

(本文より)

と考えたから。

 

 

終始、幹生のそのまっすぐさに胸が痛くなります。

 

 

また、事件を調べるうちに次々浮上する疑惑も、

スリリングで目が離せない。

 

 

 

読み終えて本を閉じ、
タイトルが改めて目に入ります。

 

初めは容姿端麗と描かれる和枝・瑞葉のことかと思っていました。

読み終えた今、和枝を理解すること、和枝の兄として生きることを諦めない幹生こそ、うつくしいと感じます。

これだから読書はやめられない。