それでもハラは減る

毎日20時更新、読んだ本と美味しいモノのこと。

読むこと

気づいたら、もう日常に戻れない。辻村深月『きのうの影踏み』

読むこと#43 辻村深月『きのうの影踏み』 辻村深月のホラー短編集。 実はホラーと知らずに読み始めて。 一編目で 「うっへえ……」 と言ってしまった。 勝手に青春系だと思ってたヨー…。 いわゆるおばけ=心霊現象の話というより、 日常に潜むちょっとした違和…

ずーっとお金のこと考えちゃう人へ。垣谷美雨『老後の資金がありません』

読むこと#42 垣谷美雨『老後の資金がありません』 こんな小説、アリ?と思いながら、あっという間に読んでしまった。 始まってから終わりまでずーっと、 主婦のお金の悩みの話。 主人公の主婦・篤子は、コツコツ節約に励んで貯金してきたけど、 娘のハデ婚や…

“幸せ”とは、“ドラえもんとのび太”。よしもとばなな『デッドエンドの思い出』

読むこと#41 よしもとばなな『デッドエンドの思い出』 洗われたような気持ちになりながら、 気持ちの奥の方がちょっとチクッとする短編集。 どれも、 誰かと出会い日常を紡ぐことの愛おしさと、離別の切なさを描いています。 どの作品も、よしもとばななワー…

シンプルで切実な、読書史上いちばん好きな場面。『風が強く吹いている』

読むこと#40 三浦しをん『風が強く吹いている』 いつまでも忘れられない作品って、誰にでもある。 ぽんにとっては、 三浦しをん『風が強く吹いている』です。 今週のお題「名作」 ということで、 改めて、大好きな小説について書きたいと思います。 主人公は…

どんな自分がいいのか、鏡に問いかける。湊かなえ『カケラ』

読むこと#39 湊かなえ『カケラ』 テーマは美醜。ずしっときます。 ぽんは、ミステリーにハマった1番最初の記憶が湊かなえ。 “イヤミス”というジャンルを初めて肌で感じたのも湊かなえ。 モヤモヤしながら一気読みしたい… というときは帰ってくる、原点みたい…

たまには本…じゃなくブックカバーの話をしよう。

読むこと#38 2日に1冊読むぽん、 偏愛ブックカバーがコレダァ。 素材やデザインなど、ブックカバーって選び出したらキリがない… いろいろ使ってきたけど、雑貨屋でふいに出会ったコレがほぼカンペキ。 かれこれ5年以上の付き合いです。 文庫本サイズ、1000円…

タイトルから共感lv.100。津村記久子『とにかくうちに帰ります』

読むこと#37 津村記久子『とにかくうちに帰ります』 タイトルの引力たるや。 著者の作品は好きでちょこちょこ読んできましたが、本作は初めて。 表題作ふくめ、3編収録。 『職場の作法』 『バリローチェのファン・カルロス・モリーナ』 『とにかくうちに帰り…

笑えて泣けて、家族全員+αの成長物語。重松清『なきむし姫』

読むこと#36 重松清『なきむし姫』 子どもだけじゃなく、親だけじゃなく、 家族みんな成長するホームコメディ。 みんないい塩梅に人間臭くて、でも軽やかに読めるのがイイ。 タイトル「なきむし姫」は、主人公アヤのこと。 昔から引っ込み思案で泣き虫、幼な…

“母親を産みたい”。ひたすらに圧倒的な物語。宇佐美りん『かか』

読むこと#35 宇佐美りん『かか』 タイトルの「かか」=母親と、 娘「うーちゃん」の物語。 こっ…れは、ちょっと構えて読んだ方がいいかも。 そのくらい圧倒されました。 「かか」は、いわゆる毒親。 自分の母親や姉に暗い感情を募らせて死ぬと騒いだり、それ…

食べることは生きること。加藤千恵『あなたと食べたフィナンシェ』

読むこと#34 加藤千恵『あなたと食べたフィナンシェ』 読んでいると、思い出す食べ物がきっとあるはず。 食べ物にまつわるショートストーリーと短歌集です。 ある食べ物が題になっていて、ショートストーリー、最後に短歌。 というのがひたすら続きます。 そ…

毎日がこれでいいのか迷ったら。小川糸『サーカスの夜に』

読むこと#33 小川糸『サーカスの夜に』 「得意なことは」 「小さいこと」 13歳の主人公「僕」は、 10歳で身体の成長が止まったまま。 幼いころ飲んだ薬の副作用で、もうこれ以上大きくなれない。 そんな主人公がサーカス団に入団し、成長していく物語。 トイ…

じんわり沁み入る生活のかけらたち。幸田文『台所のおと』

読むこと#32 幸田文『台所のおと』 幸田文作品、一度しっかり読んでみたかった。 “幸田露伴の次女” という響きに勝手にハードルを感じて未履修だったけど、いざ挑戦。 読み終えてみて。 正〜〜直に打ち明けると、エンタメ系をよく読むぽんにとってはちょっと…

このひとと出会えたから、私は私でいられる。宮下奈都『ふたつのしるし』

読むこと#31 宮下奈都『ふたつのしるし』 『羊と鋼の森』を読んでから、 著者が描く“不器用なひと”がとても好き。 不器用で、でも芯と呼べる静かなたしかな部分をもっているひと。 読んでいると、優しい気持ちになりながらも背筋が伸びる気がする。 本作も、…

超本格、なのに読みやすい医療ミステリ。小松亜由美『誰そ彼の殺人』

読むこと#30 小松亜由美『誰そ彼の殺人』 読む決め手になったのは、著者のプロフィール。 ミステリー好きぽん、 それっぽいタイトルは一旦手に取る。 実際に読むかは、ぱらぱらめくったり、帯とか見たりして決めるのだけど。 今回は。 著者が現役の法医学者…

このからだで生きることが愛おしい。窪美澄『すみなれたからだで』

読むこと#29 窪美澄『すみなれたからだで』 「性」と「生」がテーマの短編集。 主人公の性別もおかれた環境もさまざま、 性的嗜好も悩みもさまざま。 どの作品もボリュームとしては多くないのだけど、 主人公たちが自分の抱えるからだと性について考える姿、…

これ読んで浮かぶひとが、あなたの家族。瀬尾まいこ『傑作はまだ』

読むこと#28 瀬尾まいこ『傑作はまだ』 “息子が父親に”「初めまして」と挨拶するところから始まる。 (もう気になる…!) 著者の作品は、 『そして、バトンは渡された』が記憶に新しいけど、ぽんは本作の方がかなり好き。 『バトン〜』が血のつながらない親…

大人こそもう一度、いや何度も読みたい。梨木香歩『西の魔女が死んだ』

読むこと#27 梨木香歩『西の魔女が死んだ』 うちには大きな本棚が無いので、 本は買って、読んだら売って、の繰り返し。 でも。 これは手元に置いておきたい…という数冊は売らずにとっておきます。 そのなかの一冊がこれ、 言わずと知れすぎた名作『西の魔女…

これだからどんでん返しはやめられない!芦沢央『悪いものが、来ませんように』

読むこと#26 芦沢央『悪いものが、来ませんように』 ネタバレ厳禁。 この注書きがこんなに必要な小説もなかなか無い。 ぽんの読書歴で、 「やられた…!!!」 って声に出した小説は2冊だけ。 1冊は乾くるみ『イニシエーション・ラブ』、 もう1冊がこれ。 多…

ラスト、優しく光が差す。宮本輝『錦繍』

読むこと#25 宮本輝『錦繍』 こんなに引き込まれる書き出し久しぶり。 前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした。 (本文より) このリズムと詩的な雰囲気。 何か…

自分じゃない誰かと生きる、全ての人へ。角田光代『対岸の彼女』

読むこと#24 角田光代『対岸の彼女』 読み終えて、もっかい帯見て、 そんな話じゃなくない??? ってなった小説です。(私だけ?) 結婚している、していない。 子どもがいる、いない。 同じ女性なのに、なぜこんなにも分かり合えないのか。 ……とかって紹介…

日常とホラーは紙一重。長谷川夕『僕は君を殺せない』

読むこと#23 長谷川夕『僕は君を殺せない』 ぐいぐい一気読みしてしまい、 気づいたら終わってた。 サイコ×ホラー×ヒューマンドラマ のような、不思議な小説でした。 一人称「僕」と「おれ」が交互に語られ、 少しずつ点と点が線を結んでいく。 一人称の話し…

きっとあの人を思い出す、”幽霊”小説。中島京子『ゴースト』

読むこと#22 中島京子『ゴースト』 ”幽霊”にまつわる、短編集。 タイトルと装丁から、少しぞくっとするような物語を想像してた。 むしろ心が温かくなり、 そしてきゅっと切ない気持ちになる作品でした。 収録された短編は7つ。 生きている者とゴーストの交…

うるさいくらいの繊細さがクセになる。千葉雅也『オーバーヒート』

読むこと#21 千葉雅也『オーバーヒート』 前知識ほとんど無く手に取りました。 同性愛を扱った小説です。 開いて数ページ、 う、あっ、ちょっと、苦手かも………! と思ってしまった。 同性愛の描写がではなくて、主人公の哲学的な思考や詩的な比喩が。 ぽんは…

ワールド全開の“青春×不穏”、目が離せない。恩田陸『ネバーランド』

読むこと#20 恩田陸『ネバーランド』 これこれ、恩田陸ってこれ…! って頷きたくなる世界観。 “青春”と“不穏”がばちっと共存する感じ、 一気読みしてしまいました。 舞台は、伝統ある男子高校の寮。 年末にみんな帰省するなか、帰らず寮に残って年越しするこ…

ヤケド注意な初恋小説。山田詠美『ファースト クラッシュ』

読むこと#18 山田詠美『ファースト クラッシュ』 読み終えたぽんの第一声「疲れた…」 ファーストクラッシュ=初恋 の衝撃を、生々しく鮮やかに描く物語。 “私のファーストクラッシュは…”なんて 優しく甘い想像はさせてくれない、 かなり体力をもっていかれる…

“ぜんぶ捨てた、その先”を考えずにはいられない。三浦しをん『天国旅行』

読むこと#17 三浦しをん『天国旅行』 “心中”がテーマの短編集。 死のうとする人・死んだ人と、その周りの物語。 前回の読むこと#16『キッチン』に続き、生と死について考えさせられる作品でした。 軽くないテーマなのに、 文章のテンポが良くて、不思議とど…

静けさの中で感じる、死と生。吉本ばなな『キッチン』

読むこと#16 吉本ばなな『キッチン』 一貫して”死”の気配が漂っているのに、 清らかで穏やかで、澄んだ物語。 こんな小説、読んだことない。読んでよかった。 本書に収録されているのは3編。 表題作『キッチン』とその後日譚である『満月』、2作とは別の物…

このミステリー、取注です。芦沢央『汚れた手をそこで拭かない』

読むこと#15 芦沢央『汚れた手をそこで拭かない』 ホラーミステリーの気分のとき、決まって手に取る作家。 今回も飲むように一気読みしてしまいました。 ちょっとした秘密や、過去にあった確執。 誰が経験してもおかしくない出来事から始まる、 思いもよらな…

だらしない大人たちが見せる、生きるということ。東山彰良『小さな場所』

読むこと#14 東山彰良『小さな場所』 とにかく雑多な掃き溜めの物語。 なのに、前向きで、宝物のような物語。 舞台は、紋身街。 台湾・台北の繁華街の一角に実在するエリアで、タトゥーショップが立ち並ぶ裏路地。 猥雑。 そんな言葉が似合う街で展開する、 …

読むのは苦しい、でもきっと救いになる物語。武田綾乃『愛されなくても別に』

読むこと#13 武田綾乃『愛されなくても別に』 ネグレクト、 性被害、 宗教、 家族の犯罪。 家族に問題を抱える少女たちの物語。 主人公たちが抱える事情は決して軽いものではなくて。何度も読むのが苦しくなりました。 主人公・宮田は、バイトで月に20万円を…