読むこと#10
高瀬隼子『犬のかたちをしているもの』
終始モヤモヤ自問しながら読み終えました。
ページ数は多くないのに、どっとHPを使ったような。
世間一般で良いとされていること。
善とされている存在。
みんなそれを認めて、周りと同じ方を向いて生きているのに。
高瀬隼子の作品は、
「ホントにそう思ってる?」
と問いかけてきます。淡々と。
ある日彼氏から呼びされ、
行った先で見知らぬ女性から提案されたのは
「子ども、もらってくれませんか。」
子どもの父親は、彼氏。
つまり、自分の彼氏と、見知らぬ女性との子。
困惑しながらも、主人公が思い出すのは昔飼っていた犬。
自分が生み落としたわけではないけど、
すべてを投げ出せるくらいの愛情を感じていたあの犬。
同じように、人だって無条件に愛せるんじゃないか。
………イヤイヤいろいろおかしいでしょ!
と言いたいはずなのに。
とつとつと冷静に続く主人公の一人称語り、
つい読み進めてしまいます。
直接的な喜怒哀楽の表現は多くない。
でもかえって、淡々と内省していく姿が妙にリアルで。
子どもが欲しいのか。
子どもがいる人生が欲しいのか。
作中で主人公が度々考える問。
自分の常識が、静かに揺さぶられた気がします。
これだから読書はやめられない。