どんな自分がいいのか、鏡に問いかける。湊かなえ『カケラ』
読むこと#39
湊かなえ『カケラ』
テーマは美醜。ずしっときます。
ぽんは、ミステリーにハマった1番最初の記憶が湊かなえ。
“イヤミス”というジャンルを初めて肌で感じたのも湊かなえ。
モヤモヤしながら一気読みしたい…
というときは帰ってくる、原点みたいな作家です。
久しぶりに帰ってきたら、
やっぱり期待を裏切らずしっかりイヤミスでした。
美容クリニックを経営する橘久乃が、
ある出来事について関係者に話を聞いていく。
その話し相手たちの独白でひたすら物語が進みます。
久乃が追うのは、患者だった少女が自ら命を絶った事件。
少女はかなり太っていて、久乃のクリニックに脂肪吸引の相談にきていました。
外見のことでからかわれたのを苦に…??
いろいろな憶測が飛び交うなかで、
少しずつ、周りの人の証言から雲行きが怪しくなっていく。
この外堀埋められていく感じがたまらなく、
モヤモヤぐるぐるしながら読み進めます。
作品では何度も、見た目とか美容整形・ダイエットの話が出てくる。
インターネットの普及で、誰でも美容の情報を簡単に手に入れられるようになったし、美容医療も身近になってきた。
私たち一人一人が「こうなりたい」と思う欲はどんどん強くなっているような。
でも。
鏡を見て、
「目がもうちょっとこうなら」
「鼻がこうだったら」
みたいな、
そんな箇条書きみたいなカケラをつぎはぎする話じゃないのかも。
自分の外見も内面も、どんな風にありたいんだろう。
望んだ自分になった先に、どんな毎日を送りたいんだろう。
ちょっと鏡を見て、問いかけたくなる。
これだから読書はやめられない。