それでもハラは減る

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日常が一瞬で暗転 山本文緒の短編集『ばにらさま』

 

読むこと#1

山本文緒『ばにらさま』

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帯の著者コメント、こんな内容でした。

書こうと思ったきっかけは、閉店間際の駅ビルを無目的な顔でふらふらと歩く美人さんを見かけたとき

 

どうにも気になり購入。

そして一気読み。

 

『自転しながら公転する』を読んだときにも思いましたが、
山本文緒”日常”と”生きづらさ”の切り取り方がとても好きです。

 

生きていれば誰でも感じる息苦しさや、日々が思うようにならないもどかしい気持ち、明日より先の未来にどうしたって膨らんでしまう不安。

登場人物たちが吐き出す、決して明るいとは言えない感情がとてもリアルで。

 

 

そうだよなあ、人生はしんどいことばかりじゃないけど、でもしんどいことだって沢山あるんだよなあ…と、自分の毎日を振り返りながら読みました。

 

 

 

刺さったポイントがもう一つ。

6編収録されたどの作品も、どこかいびつで、少し不気味なんです。

 

ホラー要素があるわけではないのに、なにか引っかかるような気持ち悪いような。

何だろうこの違和感は…とモヤモヤしながら読み進めることになります。

 

 

 

そして物語の終盤で、世界がぐっと暗転するような仕掛けに気づかされます。

さっきまで”どこかの誰かの話”だと思っていたのに、気がついたらとんでもないところに連れてこられていた。

そんな感覚でした。

 

 

特に『わたしは大丈夫』は、うわあ……やられた………としばらく呆然。
すぐに次の作品に進むことができず、いちど本を閉じて電車を降りました。
(ぽんの読書時間は専ら通勤中)

 

 

日常と非日常の、絶妙すぎる匙加減。

可愛らしさを感じるタイトルですが、鮮やかに裏切られました。

これだから読書はやめられない。