読むこと#2
小野寺史宜『食っちゃ寝て書いて』
ああ、生きるってこういうことなんだよな。
そう思わせてくれる作品でした。
メインの登場人物は二人。
細々と執筆を続けてきたものの、スランプ気味の作家。50歳。
彼を担当する若手編集者。
一冊の本ができるまでの、二人の日々。
章ごとに二人の視点が入れ替わりながら物語が進みます。
小野寺史宜の作品は、生活が良い意味で生々しくて好きです。
そこ、そんなに細かく書くの?と思うような、
細かい生活の描写がたくさん出てきます。
たとえば。
いつも買っている木綿豆腐のフタが開けづらくなったとか。
買った電子レンジを、送料がもったいないから自分で持って帰ったとか。
いざ文章に書き起こそうとすると本当に細かくて、
言ってしまえばどうでもよいことが、丁寧に拾われている。
飽きずに一つ一つの描写を読んでしまうのは、
文のリズムの良さはもちろんなのですが、
誰の生活も生活もそういうことの繰り返しだからだと思います。
人生はドラマではないから、
毎日は地味で些細で、物語にしようとしたらどうでもよいことばかり。
そんなどうでもよいことに向き合っていくのが、生活するということなんだと思います。
また、主人公二人も魅力的でした。
魅力的というか、読んでいて安心するんです。
人並みに仕事やプライベートに悶々とした思いを抱えてもがいている、
とても読者に近いタイプの主人公。
読み終えた後、自分の人生も悪くない、今日もしっかり生きよう。
自然とそう思えました。
これだから読書はやめられない。