読むこと#7
寺地はるな『水を縫う』
手芸が好きな男子高校生・清澄。
一方で結婚を控えた姉は、可愛いものが苦手。
清澄は、母に反対されながらも、
姉のウェディングドレスをつくると宣言します。
あらすじだけ読むと、
「ジェンダー」とか「性の多様性」とか、
最近よく聞くテーマが浮かびます。
でも読み終えて感じたのは、
もっと原始的な、根底にある大切なこと。
私は、私の好きなものを好きでいていい。
私は、私を好きになる努力をしていい。
ということ。
手芸が好きなことで、周りから少し浮いている清澄。
性被害にあって以来、”かわいい”ものを避けている姉・水青(みお)。
家族のあり方、母のあり方に悩む母・さち子。
いま以上に、女性が「女性らしさ」に抑圧される時代を生きてきた祖母・文枝。
と。
家族と離別し、今は人づてに養育費を渡す関係の父・全(ぜん)。
物語は章ごとに語り手が変わります。
語り手たちはそれぞれ、
今の生活・これまでの人生に引っかかるものを抱えていて。
悶々とする彼らに、分かるなぁ…と切ない気持ちになります。
そして、戸惑いながらも、一歩、”今までの自分”を踏み越えていく。
自分が自分であるために。
自分を好きでいるために。
その姿が本当に清々しくて、どこか羨ましくも感じました。
自分という存在で生きることは、
思っているよりもずっとずっと尊いこと。
前に進んでいく姿に気づかされ、勇気をもらえます。
これだから読書はやめられない。