読むこと#41
よしもとばなな『デッドエンドの思い出』
洗われたような気持ちになりながら、
気持ちの奥の方がちょっとチクッとする短編集。
どれも、
誰かと出会い日常を紡ぐことの愛おしさと、離別の切なさを描いています。
どの作品も、よしもとばななワールド全開。
著者の作品は、比喩の秀逸さが好き。
何でこんなすくい上げ方ができるんだろう、
と、いつも感動するよりも驚かされながら読みます。
今回もたくさん、驚きながら読みました。
特に印象に残っているのが。
作中で何度か出てくる問い、
幸せってどういうことか。
ある作品中で登場人物が、
“のび太くんとドラえもん”
だって表現するんです。
のび太の部屋で、2人それぞれ漫画を読んでる。
のび太は座布団2つに折って、寝転んで。
ドラえもんはあぐら書いて、片手に漫画、片手にどら焼き持ってたりして。
そのどら焼きは、どこにでも売っていそうな安いやつ。
幸せってああいうののことな気がするなって。
この表現。
この発想。
うわあやられたなぁ…と悶絶しながら、
悔しいくらい腑に落ちた。
出会って別れて、いろんな縁を通り過ぎて。
何気ない、ほんとうに何気ない日常を一緒に紡ぐ人がいる。
お互いが意識するわけでもない毎日の一瞬。
それがどんなに代え難いことか。
日本で育った人なら誰もが思い浮かぶあのひとコマでたとえてくるなんて、
想定外なのに納得しすぎて、しばらくぼーっとしてしまった。
読み終えると、
身の回りの小さなできごとが、きらきらと愛おしく切なく見えてくる。
そしてきっと、
切ない記憶とともに思い出す人がいる。
今は別々の道を歩いているあの人。
これだから読書はやめられない。