それでもハラは減る

毎日20時更新、読んだ本と美味しいモノのこと。

読むのは苦しい、でもきっと救いになる物語。武田綾乃『愛されなくても別に』

読むこと#13

武田綾乃『愛されなくても別に』

f:id:P_O_N:20240229191106j:image

ネグレクト、

性被害、

宗教、

家族の犯罪。

 

 

家族に問題を抱える少女たちの物語。

 

主人公たちが抱える事情は決して軽いものではなくて。
何度も読むのが苦しくなりました。

 

 

主人公・宮田は、バイトで月に20万円を稼ぐ大学生。

時に大学の授業も犠牲にし、
恋愛も友達づきあいも贅沢品。

そこまでして稼ぐ理由は、実家にお金を入れるため。

彼女の母親の存在、
読んでいるとすごく重く苦しく刺さってきます。

 

 

あるきっかけから、
宮田は家を出て大学の同級生・江永と同居することに。

彼女もまた、想像を絶する過去をもっています。

 

 

 

読んでいて辛くなるような境遇の彼女たちがこぼす言葉が、
どれも胸に鈍く刺さります。

気軽に感動したとか言えない。

 

 

 

印象に残っているのが、終盤、

来年はオリンピックと引越しの年だ、と江永が語る場面。

そこ並べちゃうんだ、と指摘する宮田に、

オリンピックより引越しの方が大事、と返すんです。

 

自分という存在も、生きることもどうでもいい…そんな過去をもつ江永。

 

明日も、来年も、宮田と生きていく。

そんなやわらかな決意表明に聞こえて、

うわぁ…と胸がキュッとしました。

 

 

決して、希望が見出せるとか、
そんなキラキラした物語ではないと思います。

でも絶対に、誰の心にも軽くなる部分があると思う。

これだから読書はやめられない。