読むこと#13
武田綾乃『愛されなくても別に』
ネグレクト、
性被害、
宗教、
家族の犯罪。
家族に問題を抱える少女たちの物語。
主人公たちが抱える事情は決して軽いものではなくて。
何度も読むのが苦しくなりました。
主人公・宮田は、バイトで月に20万円を稼ぐ大学生。
時に大学の授業も犠牲にし、
恋愛も友達づきあいも贅沢品。
そこまでして稼ぐ理由は、実家にお金を入れるため。
彼女の母親の存在、
読んでいるとすごく重く苦しく刺さってきます。
あるきっかけから、
宮田は家を出て大学の同級生・江永と同居することに。
彼女もまた、想像を絶する過去をもっています。
読んでいて辛くなるような境遇の彼女たちがこぼす言葉が、
どれも胸に鈍く刺さります。
気軽に感動したとか言えない。
印象に残っているのが、終盤、
来年はオリンピックと引越しの年だ、と江永が語る場面。
そこ並べちゃうんだ、と指摘する宮田に、
オリンピックより引越しの方が大事、と返すんです。
自分という存在も、生きることもどうでもいい…そんな過去をもつ江永。
明日も、来年も、宮田と生きていく。
そんなやわらかな決意表明に聞こえて、
うわぁ…と胸がキュッとしました。
決して、希望が見出せるとか、
そんなキラキラした物語ではないと思います。
でも絶対に、誰の心にも軽くなる部分があると思う。
これだから読書はやめられない。