読むこと#36
重松清『なきむし姫』
子どもだけじゃなく、親だけじゃなく、
家族みんな成長するホームコメディ。
みんないい塩梅に人間臭くて、でも軽やかに読めるのがイイ。
タイトル「なきむし姫」は、主人公アヤのこと。
昔から引っ込み思案で泣き虫、幼なじみで夫の哲也にいつも頼ってきた。
のですが。
突然決まった、夫・哲也の単身赴任。
1年間。
2人の幼い子どもたち、
控えめでプレッシャーに弱い「ブンちゃん」と、活発な野生児「チッキ」を抱えて不安いっぱい。
そこに、アヤと哲也の幼なじみ「健」が引っ越してきます。
シングルファーザーとして。
健は昔から豪快でガサツで、ちょっと掴みどころが無いところも。
父親になってからもそのキャラは変わらず。
アヤが格闘するママ友問題や、子育ての悩みにい〜い具合に首を突っ込んでいきます。
その様子が、くすっと笑えたり涙がにじんだり。
ニヤニヤしながら、応援しながら見守りたくなります。
やっぱり重松清作品だなあと思うのは、
随所随所に、ちょっとうるっと来るようなフレーズが散りばめられていて。
ぽんが1番好きなのは、
哲也の単身赴任先でのプロジェクトが頓挫気味になり、人員の早期入れ替え、
つまり哲也が予定よりも早く戻れるかもしれないとなったとき。
健が言うんです、
逃げ場にしちゃダメだって。
哲也には、家族を仕事の逃げ場にするなと。
家族とギスギス気味で、哲也と入れ替わりで単身赴任したがっていた同僚には、
仕事を家族の逃げ場にするなと。
健の言葉にちょっとドキッとしながら、
単身赴任を最後まで務めようと決心する哲也に胸が熱くなる。
きっと読むたび、響く言葉が違うんだろうと思います。
これだから読書はやめられない。