読むこと#18
山田詠美『ファースト クラッシュ』
読み終えたぽんの第一声「疲れた…」
ファーストクラッシュ=初恋
の衝撃を、生々しく鮮やかに描く物語。
“私のファーストクラッシュは…”なんて
優しく甘い想像はさせてくれない、
かなり体力をもっていかれる小説でした。
優雅に暮らす高見澤家に、
居候の少年・力(リキ)が現れるところから物語が始まります。
このリキが、どうにも読めない食えない分からない。
リキは、高見澤家の父の愛人の子。
愛人が亡くなって、父が引き取ることに。
リキは飛びぬけて容姿が美しいわけではなく、
むしろ薄汚れていて汚らしい印象と描かれています。
また、いわゆる“人たらし”のような
朗らかさ・憎めなさがあるわけでもない。
それなのに。
高見澤家の3姉妹と、その母、使用人の女性。
それぞれが抱えるコンプレックスに、
気づいたらぬっと入り込んでいる。
物語は、章ごとに3姉妹それぞれの視点から描かれる。
姉妹がそれぞれにクラッシュしていく様子、怖いもの見たさで読み進めました。
そしてそう、作中でリキの一人称は登場しないんです。
それでまた、リキが不気味に思えてくる。
読み終えて改めて帯を見ると、
「初恋、それは、身も心も砕くもの。」
恋愛小説と呼ぶにはあまりに香りの強い、じりじり胸を焼いてくる作品でした。
これだから読書はやめられない。