読むこと#17
三浦しをん『天国旅行』
“心中”がテーマの短編集。
死のうとする人・死んだ人と、その周りの物語。
前回の読むこと#16『キッチン』に続き、生と死について考えさせられる作品でした。
軽くないテーマなのに、
文章のテンポが良くて、不思議とどんどん読んでしまう。
作品によっては設定がかなり重いけど、読みやすさとのアンバランス感が癖になります。
時代ものやコメディっぽい要素が入った作品もあって、すべて違う世界を旅している気分。
そしてどの作品も、
微妙〜に最後まで描き切らずに終わっています。
この後どうなったのか。
なぜこうなったのか。
本を閉じてからも、ぐるぐると考えてしまう。
特に印象深かったのは『星くずドライブ』。
事故で亡くなり幽霊になった彼女と暮らす大学生の物語です。
誰しもが、大切な人を亡くしたとき、もう一度会いたいと願う。
でももし本当に会ったら。
その先には何があるのか。
幽霊になっても、自分のそばを離れない彼女。
自分にしか見えない彼女と、これからどうしていくのか。
葛藤する主人公の姿に、うっすら背中が粟立ちます。
ファンタジーっぽくて読みやすいのに、読後感は1番ずしっときました。
死ぬことって、リセットすることのように捉えがちだけど、本当にそうなのか。
丁寧に炙り出して、考えさせてくる本です。
これだから読書はやめられない。