それでもハラは減る

毎日20時更新、読んだ本と美味しいモノのこと。

“ぜんぶ捨てた、その先”を考えずにはいられない。三浦しをん『天国旅行』

読むこと#17

三浦しをん『天国旅行』

f:id:P_O_N:20240229213843j:image

“心中”がテーマの短編集。

死のうとする人・死んだ人と、その周りの物語。

前回の読むこと#16『キッチン』に続き、生と死について考えさせられる作品でした。

 

 

 

軽くないテーマなのに、

文章のテンポが良くて、不思議とどんどん読んでしまう。

作品によっては設定がかなり重いけど、読みやすさとのアンバランス感が癖になります。

時代ものやコメディっぽい要素が入った作品もあって、すべて違う世界を旅している気分。

 

 

 

そしてどの作品も、

微妙〜に最後まで描き切らずに終わっています。

 

この後どうなったのか。

なぜこうなったのか。

本を閉じてからも、ぐるぐると考えてしまう。

 

 

 

特に印象深かったのは『星くずドライブ』。

事故で亡くなり幽霊になった彼女と暮らす大学生の物語です。

 

 

誰しもが、大切な人を亡くしたとき、もう一度会いたいと願う。

 

でももし本当に会ったら。

その先には何があるのか。

 

 

幽霊になっても、自分のそばを離れない彼女。

自分にしか見えない彼女と、これからどうしていくのか。

葛藤する主人公の姿に、うっすら背中が粟立ちます。

ファンタジーっぽくて読みやすいのに、読後感は1番ずしっときました。

 

 

 

死ぬことって、リセットすることのように捉えがちだけど、本当にそうなのか。

丁寧に炙り出して、考えさせてくる本です。

これだから読書はやめられない。