読むこと#4
一穂ミチ『スモールワールズ』
何作か話題のタイトルを聞いたことがあり、読んでみたかった作家です。
前知識ほぼゼロで、書店で見かけて。
きらきらとファンタジックな世界観の表紙…。
繊細で美しい、小さな幸せをすくいあげるような物語なんだろうな。
と、思ったら。
しっっかり裏切られました。
一作目からダークもダーク、言ってしまえば“胸糞系”ですらあったかも。
その後も、ダーク系ばかりではないものの、“小さな幸せをすくいあげる系”とは程遠い物語が続きます。
軽く構えていた私、大火傷でした…。
登場人物たちはみんな、“普通”からは少し、いや、作品によってはかなり外れた人たち。
だから初めは、誰かの空想のお話みたい、という印象でした。
一方で、彼らの言動は妙に生っぽくて。
気づいたらとてもフィクションだとは思えなくなっていました。
私たちが生きるこの世界は、おとぎ話みたいに美しくはない。
でも生きている限り、そんな世界を信じていかなきゃいけない。
そう気づかされたようで、目がさめました。
単に心がザワザワする作品はたくさんあると思います。
本作を読んでよかったのは、そのザワザワを自分の世界に落とし込む機会になったから。
一穂ミチ、また読みたいです。
これだから読書はやめられない。