それでもハラは減る

毎日20時更新、読んだ本と美味しいモノのこと。

気づいたら、もう日常に戻れない。辻村深月『きのうの影踏み』

読むこと#43

辻村深月『きのうの影踏み』
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辻村深月のホラー短編集。

実はホラーと知らずに読み始めて。

 

 

 

一編目で

 

「うっへえ……」

 

と言ってしまった。

勝手に青春系だと思ってたヨー…。

 

 

 

 

いわゆるおばけ=心霊現象の話というより、

日常に潜むちょっとした違和感から広がる恐怖。

“世にも奇妙な”的要素が強い作品多め。

 

 

 

 

視界の端で一瞬とらえた戸棚と戸棚のすきま、誰かの視線を感じたような。

 

夕暮れ時の帰り道、なにか私を呼ぶ声がしたような。

 

 

そんな小さな小さな違和感が、

ふとした瞬間にぐわっと亀裂を広げて、飲み込まれる。

 

そんな感覚になる物語たち。

 

 

 

 

作品によってはかなりぞわぞわ、苦手な人は苦手かも。

 

ぽんはホラー特別苦手というわけではないのだけど、

何作品か、鳥肌が立って目をつぶったり、背後を確認したりしながら読みました…。

 

 

 

なんか視線を感じたりとか、

ちょっとした違和感ってきっと誰にでもある。

 

いちいち気にして調べてたらキリがないから、普段は「気のせいか」って完結する。

 

 

でも。

 

 

心の奥底では私たちは知ってる。

「気のせい」って言い切れないということ。

 

 

 

違和感のすくい上げ方と、

5分後には自分の身に起こりそうに思えるリアルさがえげつない。

だからこの短編集はこんなにもぞっとするんだと思います。

 

 

 

気のせいは、気のせいじゃないかもしれない。

当たり前に続くと思っている日常は、いつその裏側に引きずり込まれるか分からない。

 

 

この小説、

読んじゃうと今までの日常には戻れません。

これだから読書はやめられない。