読むこと#9
角田光代『さがしもの』
読書って何が面白いの
と、聞かれることがある。
ゲームやスポーツと違って、大笑いしたり体を動かしたりしてスッキリするわけではないし、
所詮は誰かのつくり話、すぐ何かに役に立つわけでもない。
まあ、たしかに、そう…。
でも本好きはみんな、だから本は要らない、とはならない。
ならないから、本好きなんだけど。
うーん、なんだかモヤモヤする。
本作は、そんな気持ちにやわらかな答えをくれる。
やっぱり角田光代の描く言葉は、
あたたかくて、するどい。
”本”をめぐる短編集。
収録された9編どれもが、ちょっと切なくて、
じんわりとあたたかい気持ちになります。
自分にとって、こんな本はあっただろうか。
あの本とは、どうやって出会ったんだっけ。
読みながら、自分の本棚を眺めずにはいられません。
別に。
エキサイティングだったり、
役に立ったりするから本を読んでいるわけじゃない。
”誰かのつくり話”であっても、
胸がぎゅっと苦しくなったり、
読む前と後では、世界がまったく違うように見えたりもする。
本を読む理由はそれで十分、と改めて思いました。
十分、贅沢な理由だと思う。
そうやって1冊読むたび、
自分のなかにアンテナがぽこっと増えて、
新しい扉を開く助けになっていく気がする。
これだから読書はやめられない。