それでもハラは減る

毎日20時更新、読んだ本と美味しいモノのこと。

このからだで生きることが愛おしい。窪美澄『すみなれたからだで』

読むこと#29

窪美澄『すみなれたからだで』

f:id:P_O_N:20240406153726j:image

「性」と「生」がテーマの短編集。

主人公の性別もおかれた環境もさまざま、

性的嗜好も悩みもさまざま。

 

 

どの作品もボリュームとしては多くないのだけど、

主人公たちが自分の抱えるからだと性について考える姿、スラスラとは読み流せない。

ぐっと重いものが残る話も多かった。

 

 

 

かなり作品によって雰囲気が違うので、

私はこれ、というのが人によって分かれそう。

 

 

 

 

ぽんは、『猫と春』が1番好き。

 

 

アルバイト生活をしながら、彼女と同棲する男性。

年齢も30を前に、生活や将来のこと、考えることも多いなか、彼女といることに絶対の理由を見出せずにいる。

それはきっと彼女もそう。

 

 

そんな2人の生活に、1匹の猫が迷い込む。

ラスト、お互いのいる生活を再認識する様子が、少し切なくて詩的で優しい。

年齢が近いせいか、主人公が悶々とする姿にきゅっと切なくなるものがある。

 

 

 

 

このからだで生きていく限り、そこで起こる変化とは無縁ではいられない。

そのことが、少し怖くもありまた愛おしくも思えてきます。

これだから読書はやめられない。