読むこと#29
窪美澄『すみなれたからだで』
「性」と「生」がテーマの短編集。
主人公の性別もおかれた環境もさまざま、
性的嗜好も悩みもさまざま。
どの作品もボリュームとしては多くないのだけど、
主人公たちが自分の抱えるからだと性について考える姿、スラスラとは読み流せない。
ぐっと重いものが残る話も多かった。
かなり作品によって雰囲気が違うので、
私はこれ、というのが人によって分かれそう。
ぽんは、『猫と春』が1番好き。
アルバイト生活をしながら、彼女と同棲する男性。
年齢も30を前に、生活や将来のこと、考えることも多いなか、彼女といることに絶対の理由を見出せずにいる。
それはきっと彼女もそう。
そんな2人の生活に、1匹の猫が迷い込む。
ラスト、お互いのいる生活を再認識する様子が、少し切なくて詩的で優しい。
年齢が近いせいか、主人公が悶々とする姿にきゅっと切なくなるものがある。
このからだで生きていく限り、そこで起こる変化とは無縁ではいられない。
そのことが、少し怖くもありまた愛おしくも思えてきます。
これだから読書はやめられない。