読むこと#15
芦沢央『汚れた手をそこで拭かない』
ホラーミステリーの気分のとき、
決まって手に取る作家。
今回も飲むように一気読みしてしまいました。
ちょっとした秘密や、過去にあった確執。
誰が経験してもおかしくない出来事から始まる、
思いもよらない結末
――という5編の短編集。
とにかく、どの作品もずーっと不気味なんです。
登場人物なのか、設定とかエピソードなのか、
何が、と言われても具体的に分からない。
それもまた怖い。
でも確かに這い上がってくる、違和感。
早く抜け出したくて、ページをめくる手が止まらない。
読み進めたら読み進めたで。
待っているのは、
お腹がひゅっと冷えるような伏線回収。
どんでん返しでスッキリ、ではなく、
もう一段背中が粟立つようなものが多かった。
特に印象深かったのは、
主人公の教員が仕事のミスをなんとか隠そうとする『埋め合わせ』。
ラスト数ページで、鳥肌が立て続けに3回くらい。
もうほとんどお化け屋敷みたいな、
息が詰まるような感覚で読み終えました。
トリックの鮮やかさも好きだけど。
本作の魅力は、
人間の汚い部分・弱い部分が遠慮なくあぶり出されているところだと思います。
誰だって考えるような、ほんのちょっとの見栄や保身。
小さなほころびから、ボロボロボロボロ崩れていく様。
人間をまったく美化してくれないところが、
苦しいはずなのにクセになる。
これが怖いもの見たさってやつ…。
この中毒性、完全に取り扱い注意。
久しぶりに、食事を忘れて一気読みした作品です。
これだから読書はやめられない。