それでもハラは減る

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ぞわっと×切ないSF。木皿泉『カゲロボ』

読むこと#51

木皿泉『カゲロボ』

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えっこれ本当に木皿泉???

 

人間や動物そっくりのアンドロイドが日常に溶けこむ。

 

そんな、非日常、

でも近い将来に絶対無いとは言い切れない、

不思議でファンタジーでちょっと不気味な短編集。

 

 

 

木皿泉といえば『昨夜のカレー、明日のパン』のイメージが強かったから、

一作目を読み終えた時点で表紙の作者二度見した。

世界観が違いすぎて。

 

 

 

 

 

1番印象的だったのは、『かお』。

 

主人公の中学生・ミカは、なかなか初潮が来ない。

そして母親は、そのことをミカ以上に神経質に気にしているようで。

 

初潮のこと以外にも、寝ているミカの手足の長さを毎晩こっそり測ったり。

異常なほどに、ミカの体の変化に敏感。

 

 

 

そんななか聞いてしまったのは、

電話で誰かに「交換したい」と訴える母の言葉。

 

え、わたしを?何と?

 

 

 

 

そしてミカは、父から衝撃の事実を聞きます。

 

ぎりぎりネタバレにならないように、ちょっとぼかすと…

 

それは、自分がもうひとりいるということ。

 

 

 

 

 

ミカが直面する秘密と、その結末。

 

 

ぞわっと鳥肌がたちながら、同時にきゅっと切ない。

これは初めての体験だったかも。

 

 

 

 

 

いじめの描写があったり、命のあり方を考えさせられたり、扱われてる話題は軽くない。

どの作品も、ちょっと暗いというか、不気味な空気をまとってる。

 

でもいい意味で軽く読めたのは、SFファンタジーの雰囲気がしっかりあるから。

 

ありそうで、なさそうだから。

 

 

 

……でも、そう。

近い将来、絶対無いとは言い切れない。

ありそうでなさそうで、ありそう。

 

これだから読書はやめられない。