それでもハラは減る

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奇妙で苦しくて、でも読んでよかった。梨木香歩『エンジェル エンジェル エンジェル』

読むこと#6

梨木香歩『エンジェル エンジェル エンジェル』

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本編約140ページ、あっという間に読めるのに、

胸にはぐっと重みが残る作品でした。

 

少女コウコと、ほとんど寝たきりのおばあちゃん。

章ごとに、現代のコウコ視点と、少女時代のおばあちゃん視点が入れ替わります。

 

 

2人で熱帯魚の世話をするうち、
おばあちゃんのなかの遠い記憶が呼び起こされていく。

 

それはとても苦しい記憶。

そしてきっと、誰の心にも存在する感情です。

読んでいて、きゅっと胸がしめつけられるようでした。

 

 

少女と祖母
と聞くと、著者の代表作『西の魔女が死んだ』が浮かびますが、
まったく違う物語だと思います。

 

本作は、うまく言えないのですが、
もっと鋭利で奇妙で、心の暗いところに大きく入り込んでくる。

 

 

 

人はだれでも、天使にも悪魔にもなれる想像力をもっていること。

なりたいように生きるのは途方もなく難しいということ。

 

こんなに苦しい気づきなのに、

物悲しさとあたたかさが混じった気持ちになるから不思議です。

どこか童話のような、奇妙な昔話のような世界観がそうさせるのかもしれません。

 

 

「エンジェル」は、
コウコとおばあちゃん、それぞれにとって大切な意味をもちます。

 

繰り返されるその言葉は、
祈りのようでもあり、切ない呪文のようでもあり。

読み終えた後、そっとタイトルを口に出したくなりました。

 

これだから読書はやめられない。