それでもハラは減る

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自分じゃない誰かと生きる、全ての人へ。角田光代『対岸の彼女』

読むこと#24

角田光代『対岸の彼女』

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読み終えて、もっかい帯見て、

そんな話じゃなくない???

ってなった小説です。(私だけ?)

 

 

結婚している、していない。

子どもがいる、いない。

同じ女性なのに、なぜこんなにも分かり合えないのか。

 

 

 

……とかって紹介されることが多いけど、

ぽんにはちょっと違う印象。

 

 

 

女性とか関係なく、

自分とは違う誰かと生きる全ての人に向けた小説に思える。

 

 

 

 

専業主婦・小夜子と、

ベンチャー企業の社長・葵。

 

小夜子が葵に誘われて、葵の経営するクリーニング会社で働き始めるところから始まります。

 

 

 

 

読み進めていて面白いのが、

現代の小夜子目線と、少女の頃の葵目線とが交互に進むこと。

 

 

 

豪快で奔放で、自由。

小夜子から見る“女社長・葵”は、自分に無いものを全部もっているキラキラした存在で。

 

 

 

でも、少女の葵目線。

同じ人物と思えない印象を受けます。

 

 

この、時間を行き来して葵という存在が見えてくる感じ。

古い日記を偶然見つけてこっそり読んでいるような、不思議な感覚でツボ。

 

 

 

そして働くうち小夜子は、

葵が少女の頃に“心中”を図ったという噂を耳にします。

 

このあたりが葵の目線で紐解かれていくのだけど、なんともきゅっと青くて切ない。

 

 

 

自分ではない誰かはみんな、“対岸の彼女/彼”。

誰かとかかわる難しさを改めて感じます。

そして、誰しもが大なり小なり抱える、ちょっと苦い過去を思い出させます。

これだから読書はやめられない。