それでもハラは減る

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きっとあの人を思い出す、”幽霊”小説。中島京子『ゴースト』

読むこと#22

中島京子『ゴースト』

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”幽霊”にまつわる、短編集。

タイトルと装丁から、少しぞくっとするような物語を想像してた。

 

 

むしろ心が温かくなり、

そしてきゅっと切ない気持ちになる作品でした。

 

 

 

 

収録された短編は7つ。

生きている者とゴーストの交流を描いていたり、

ゴースト=亡くなった者を思う物語だったり。

 

すべて、”戦争”にまつわる背景があって、

切なくやるせない雰囲気が漂います。

 

 

 

 

特に印象に残ったのが、『きららの紙飛行機』。

戦時下の東京で浮浪児だった少年のゴーストと、

現代の東京で育児放棄された幼い女の子の物語。

 

決して明るい終わり方ではないのだけど、

どこか儚い希望を感じさせます。

 

 

 

 

面白かったのが、ミシンが主人公の物語があって。

 

激動の、戦時下の日本で使われたミシンの”生き様”が語られます。

人間だとか生き物だとか、
そういう線引きとは関係なく何でも”ゴースト”になるという発想が新鮮。

 

 

 

 

 

ある作品で、ゴーストとは、

 

語ることはできないけど、そばにいる。

ただ横にいて、思い出してもらえるのを待っている。

 

そんな存在だと表現されます。

 

 

 

だれでも時々、死んだらどうなるのか考えると思います。

ぽんも、特に大人になってからぼんやり想像することがある。

 

本作で登場するようなゴーストになるんだったら、

切ない気持ちもあるけど、悪くはないかもしれない。

 

 

 

 

読むときっと、亡くしたあの人が隣にいるように思えてくる。

でもこわくない。

じんわりあたたかくて切なくて、不思議な小説でした。

これだから読書はやめられない。