読むこと#27
梨木香歩『西の魔女が死んだ』
うちには大きな本棚が無いので、
本は買って、読んだら売って、の繰り返し。
でも。
これは手元に置いておきたい…という数冊は売らずにとっておきます。
そのなかの一冊がこれ、
言わずと知れすぎた名作『西の魔女が死んだ』。
10年以上前に初めて読んでから、もう何度読んだか分からない。
学校にうまく馴染めない中学生・まいが、
田舎の祖母と暮らした一か月あまりの記録。
畑から収穫した食材で料理し、洗濯機も無い生活。
そんな、少し不便だけどのびのびした暮らしのなかで、
まいは”魔女修行”をすることになります。
この”魔女修行”というのが、
たとえば、
毎日同じ時間に寝て起きることだったり、
自分が何をしたいのか自分で決めることだったり。
”自分の力で迷わず足をふんばって生きていくための修行”
に思える。
おばあちゃんがまいに示す考え方・生き方が、
大人にもぐっと響く、大切なことばかり。
本作以外にも、梨木香歩作品は、
読みやすいリズムとボリューム感のものが多い。
なのに。
一つ一つの言葉が、さくっと心の大事なところに刺さってくる。
また、どこか童話のような、非現実的な雰囲気もとても好き。
何度も読んでいるのに、
今回初めてちゃんと気づいた描写があって。
物語の冒頭、まいが母に連れられておばあちゃんの家に着いた日。
3人でサンドイッチを食べるのですが、
このときまいは、つんとした香りが苦手と言ってキンレンカの葉を抜いて食べる。
そして、おばあちゃんの家を去る日。
この日も、出発前にサンドイッチを食べます。
このときは、まいはキンレンカの葉を抜かずに食べているんです。
どちらのときも、まいの様子を見ながらもお母さんは何も言わなかった、
という描写があります。
1か月でちょっと変化した子供の姿、
お母さんにはどんな風に映っていたんだろう。
想像してじんわりした気持ちになる。
読むたび、心に残る場面が違う。
これから、年を重ねても何度も読み返したい本。
いつか子どもに読んでほしい本。
これだから読書はやめられない。