それでもハラは減る

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“母親を産みたい”。ひたすらに圧倒的な物語。宇佐美りん『かか』

読むこと#35

宇佐美りん『かか』

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タイトルの「かか」=母親と、

娘「うーちゃん」の物語。

 

こっ…れは、ちょっと構えて読んだ方がいいかも。

そのくらい圧倒されました。

 

 

 

「かか」は、いわゆる毒親。

自分の母親や姉に暗い感情を募らせて死ぬと騒いだり、それをうーちゃんはじめ家族にぶつけたり。

 

 

でもうーちゃん、かかを憎んでいるはずなのに憎みきれない。

それがこの作品の暗くて面白いところ。

 

 

かかの痛みを自分のことのように感じてしまう。

かかがもう苦しまなくていいように、自分がかかを産みたい。

産んで、小さなかかのずっとそばにいて説き伏せて、今みたいな辛い人生を送らなくて済むようにしたい。

 

 

 

母親を産みたい。

 

って発想がいやもう、なんだ、読んだときに

「うへぇ…」

と言ってしまった。

 

 

著者が20歳でこの作品書き上げたと聞いて、

ただただ圧倒。

もはや引いてしまった。

 

 

 

また、かなりクセのある語り口調もこの作品の特徴。

主人公が、弟に向かって語りかけているのだけど、

これが「かか語」、

つまり、うーちゃんの母親が使う独特なことばで語られる。

 

 

西国の方言のような響きもありつつ、幼児ことばのような舌足らずな雰囲気。

 

 

この語りが、作品全体に底知れない不気味さをまとわせている。

昔のこわい寓話を聞いているような、

ついつい先が気になる口調。

 

 

自分と家族の、つながりと、つなぎ目のこと。

ずしっと、考えさせられるものがあります。

これだから読書はやめられない。