読むこと#30
小松亜由美『誰そ彼の殺人』
読む決め手になったのは、著者のプロフィール。
ミステリー好きぽん、
それっぽいタイトルは一旦手に取る。
実際に読むかは、ぱらぱらめくったり、帯とか見たりして決めるのだけど。
今回は。
著者が現役の法医学者だと知り、”これは面白そうレーダー”が反応。
読んでみたら、うん、面白い。
主人公は、大学で法医学者として働く女性。
優秀だけどちょっとつかみどころの無い上司と一緒に、
身元や死因の分からない死体を解剖しています。
…ここまで聞くともう、あれを思い出す人も多い?
そう、ドラマ『アンナチュラル』。
ぽんもはじめ、もしかしてこれドラマの原作?と思ったくらい。
(調べたら、アンナチュラルは原作なしのオリジナル脚本でした。
プラス、つくられた時期は本小説の方が少し後。)
で、読み進めると…
あ、似てるようで似てなかった。
本作は、本格医療ミステリ。
『アンナチュラル』は人間模様が見どころだったと思うけど、
本作はとことん、科学の視点で話がすすむ。
どのくらい本格かというと。
解剖シーンに何ページもつかってるんです。
普段なかなか耳にしない臓器や生理現象の名前やら”○○切開”やら、
ここまでの小説、あまり見たことない。
苦手な人は苦手かもしれないけど、
このリアルさ、作者がプロの法医学者だからこそ。
一方で。
ここまでがっつり専門的に引き込んでくれるのに、
主人公の思考回路は意外と”非”科学的。
(法医学者としてはまあまあ優秀な設定なのだけど。)
ちょっとオカルトっぽい空想が好きだったり突飛な推理をしたり。
読者に近い感じがして、この性格のおかげで一気に読みやすい。
本格医療ミステリ、なのに読みやすい。
この良い意味でのアンバランスさ、
これだから読書はやめられない。