それでもハラは減る

毎日20時更新、読んだ本と美味しいモノのこと。

読むこと

だらしない大人たちが見せる、生きるということ。東山彰良『小さな場所』

読むこと#14 東山彰良『小さな場所』 とにかく雑多な掃き溜めの物語。 なのに、前向きで、宝物のような物語。 舞台は、紋身街。 台湾・台北の繁華街の一角に実在するエリアで、タトゥーショップが立ち並ぶ裏路地。 猥雑。 そんな言葉が似合う街で展開する、 …

読むのは苦しい、でもきっと救いになる物語。武田綾乃『愛されなくても別に』

読むこと#13 武田綾乃『愛されなくても別に』 ネグレクト、 性被害、 宗教、 家族の犯罪。 家族に問題を抱える少女たちの物語。 主人公たちが抱える事情は決して軽いものではなくて。何度も読むのが苦しくなりました。 主人公・宮田は、バイトで月に20万円を…

出会ったことのない不思議な物語。河﨑秋子『鳩護』

読むこと#12 河﨑秋子『鳩護』 タイトルが気になり購入しました。 はともり と読みます。 なんとも言えない、不思議系…。 都内の出版社で働くアラサーOLの元に、 ある日一羽の白い鳩が迷い込む。 その日から、不思議な男に絡まれたり、 「鳩護」をめぐる不思…

群ようこ『たべる生活』

読むこと#11 群ようこ『たべる生活』 くすっと笑えたり、耳が痛かったり。 たしかに食への意識が変わるエッセイでした。 1冊まるまる、テーマは”食”。 大半が、周囲の食生活について思うことがつらつら綴られている。 著者は毎食、冷蔵庫にある食材で自分が…

モヤモヤ体験…常識が静かに揺さぶられる。高瀬隼子『犬のかたちをしているもの』

読むこと#10 高瀬隼子『犬のかたちをしているもの』 終始モヤモヤ自問しながら読み終えました。 ページ数は多くないのに、どっとHPを使ったような。 世間一般で良いとされていること。 善とされている存在。 みんなそれを認めて、周りと同じ方を向いて生きて…

だから私たちは、本を読む。角田光代『さがしもの』

読むこと#9 角田光代『さがしもの』 読書って何が面白いの と、聞かれることがある。 ゲームやスポーツと違って、大笑いしたり体を動かしたりしてスッキリするわけではないし、 所詮は誰かのつくり話、すぐ何かに役に立つわけでもない。 まあ、たしかに、そ…

読む前には戻れない、健気な問題作。石田衣良『うつくしい子ども』

読むこと#8 石田衣良『うつくしい子ども』 のどかなニュータウンで起こった、女児の惨殺事件。 犯人は中学1年生。 ほとんどの人は、生活のなかで事件の報道を目にするとき、被害者の側に同情し、胸を痛めていると思います。 「かわいそうに…」 「なんでこん…

私たちは、好きなものを好きでいい。寺地はるな『水を縫う』

読むこと#7 寺地はるな『水を縫う』 手芸が好きな男子高校生・清澄。 一方で結婚を控えた姉は、可愛いものが苦手。 清澄は、母に反対されながらも、姉のウェディングドレスをつくると宣言します。 あらすじだけ読むと、「ジェンダー」とか「性の多様性」とか…

奇妙で苦しくて、でも読んでよかった。梨木香歩『エンジェル エンジェル エンジェル』

読むこと#6 梨木香歩『エンジェル エンジェル エンジェル』 本編約140ページ、あっという間に読めるのに、 胸にはぐっと重みが残る作品でした。 少女コウコと、ほとんど寝たきりのおばあちゃん。 章ごとに、現代のコウコ視点と、少女時代のおばあちゃん視点…

いつもそばに置きたいスケッチ集。ヨシタケシンスケ『しかもフタが無い』

読むこと#5 ヨシタケシンスケ『しかもフタが無い』 約200ページの文庫本すべてが、作者が日々描いているアイディアスケッチで埋められています。 なにか解説文やエッセイが添えられているわけでもなく、 ひたすらスケッチ。 スケッチ。 スケッチ。 ヨシタケ…

この世界は美しい?一穂ミチ『スモールワールズ』

読むこと#4 一穂ミチ『スモールワールズ』 何作か話題のタイトルを聞いたことがあり、読んでみたかった作家です。 前知識ほぼゼロで、書店で見かけて。 きらきらとファンタジックな世界観の表紙…。 繊細で美しい、小さな幸せをすくいあげるような物語なんだ…

シビれる豪華さ、短編じゃ足りない。米澤穂信ほか『禁断の罠』

読むこと#3 米澤穂信ほか『禁断の罠』 とっても贅沢な短編集、思わず買ってしまいました。 ミステリー好きならシビれる布陣はこちら。 米澤穂信 新川帆立 結城真一郎 斜線堂有紀 中山七里 有栖川有栖 実は私、中山七里以外は初めまして。 読んだ正〜直な感想…

人生はドラマじゃない、だから面白い 小野寺史宜『食っちゃ寝て書いて』

読むこと#2 小野寺史宜『食っちゃ寝て書いて』 ああ、生きるってこういうことなんだよな。 そう思わせてくれる作品でした。 メインの登場人物は二人。 細々と執筆を続けてきたものの、スランプ気味の作家。50歳。 彼を担当する若手編集者。 一冊の本ができる…

日常が一瞬で暗転 山本文緒の短編集『ばにらさま』

読むこと#1 山本文緒『ばにらさま』 帯の著者コメント、こんな内容でした。 書こうと思ったきっかけは、閉店間際の駅ビルを無目的な顔でふらふらと歩く美人さんを見かけたとき どうにも気になり購入。 そして一気読み。 『自転しながら公転する』を読んだと…